ニュートリノ

標準模型で最初に起きた問題として、ニュートリノの質量が説明できてなかったことがある。最近の研究により、ニュートリノの世代間混合や質量の2乗差が実験で確められるようになった。ニュートリノの右手系が存在すればこれらの実験を説明することができる。他にも、階層性の問題やパラメータの数が多いことなどいくつか不満な点もある。このため、標準模型を拡張しようとする試みもたくさんある。ここでは、ニュートリノに焦点を絞り、世代間混合や質量の起源に対する説明を試みる。ニュートリノに対する理解は最近の研究によって大きく発展してきている。太陽や大気ニュートリノを含む様々なニュートリノ振動実験によって長距離を走ればフレーバーが変わることが確かめられた。この現象に対し最も単純な答えはニュートリノにはクォークや他の素粒子と同じように質量があり、そしてフレーバーの固有状態と質量の固有状態が異なっていと解釈することである。ニュートリノの場合は他のフェルミオンと違って、マヨラナ質量も可能であり、事情が少し複雑になる。ニュートリノにどれくらい質量があるか考察するのは、理論的にも実験的にも重要である。ここではニュートリノの質量と混合について理論と実験の両面から考えていく。

 

 ディラックとマヨラナニュートリノ

電荷を持っていない素粒子は重要でニュートリノは標準理論の枠組みの中でも特別な意味合いをもつ。特徴的なのが質量で、電荷のある粒子はディラックタイプの質量¯ ÃÃ しか許されてない。電荷のないニュートリノはこれに加えてマヨラナタイプの質量ÃTC¡1Ã が許される。ここで、Ã は4成分のスピナーでC は荷電共役を表す行列である。どうして、ニュートリノにはマヨラナ質量が許されるかというと、反粒子と粒子が同一であることが可能だからで、荷電がないことによりマヨラナ質量が許される。質量の組み合わせである、粒子、反粒子の対をニュートリノは一つで表現できる。このマヨラナ質量は新しい種類の実験を示唆していてニュートリノの放出しない二重ベータ崩壊が起きることになる。マヨラナ質量を通しての崩壊でニュートリノに関する重要な情報が得られる。ニュートリノの質量や混合の割合が二重ベータ崩壊によって測定可能になる。他の粒子がマヨラナ質量を禁止されている理由は電荷を持っていることに起因する。マヨラナ質量は電荷保存を成立させるためにはあってはならない。U(1) 対称性やレプトン数保存などの大極的な対称性を成り立たせるために、マヨラナ質量は組むことができない。もし、電荷を持った粒子がマヨラナ質量を持てばその分電荷保存則が破れる。この点、ニュートリノは電荷をもたないので電荷保存を破ることはない。ただ、レプトン数はマヨラナ質量があると破れることになる。