イチゴの生育
露地条件でのイチゴの生育は、初秋の温度の低下と日長が短くなることに反応し、生長点に花芽を形成する。
さらに冬に向かい休眠に入り、葉は小さく地上に張り付いたような状態(ロゼット)で冬を越す。
翌年、春の気温上昇ととに草丈が伸び始め、栄養繁殖器官であるランナー(匍匐茎)が発生する。また、同時に前年秋に形成した花芽が発育し、開花結実して5~6月に赤い果実をならせる。
温度と生育
イチゴの生育適温は18~25℃で、比較的冷涼・温和な気象条件を好む作物である。根の分布は比較的狭く浅根性であり、大部分が地表から30cm以内に分布しているため、乾燥や温度の影響を受けやすい
土壌と生育
土質による生産性の違いは少なく、土質を選ばない作物と言える。
土壌の好適pHは5.5~6.5とされる。また、土壌の乾燥を嫌うが、排水不良も生育を阻害する。
肥料当たりが発生しやすく、土壌のECは0.2~0.4で変化が少ない圃場が生育や収量が優れる。
施肥反応では塩類障害が発生しやすく、多肥条件ではチップバーン等の障害が発生する。濃度変化が少ない施肥管理が望ましい。
花芽の形成
花芽の形成(花芽分化)を左右する外的要因としては温度と日長があり、我が国で栽培されているほとんどの品種は、9月中旬頃の温度と日長で花芽を形成する。
この様な花芽分化特性を持つ品種を一季成り性品種と呼び、この性質を利用し、花芽の形成を急がせ早くから収穫する方策として、苗の低温短日処理や山上げ育苗が行われている。
しかし、日長に関係なく花芽分化し、長日条件で花房の発育が促進される品種もあり、この様な品種を四季成り性品種と呼ぶ。
休眠
花芽の形成後さらに秋が深くなるとイチゴは休眠に入る。
休眠は日長(短日条件)が主要因で始まり低温により深まる。ほとんどの品種の休眠開始期は10月上中旬から、最も深い時期は11月中旬頃とされている。
休眠はイチゴにとって厳しい条件である冬場を乗り切るための自衛手段であり、地上部はできるだけ小さく、また、地に這った姿で寒さをしのぎ、地下部の根には養分を貯蔵し春に備えている。
休眠には環境条件をイチゴの生育に適した条件にしてもなお 正常な生育をしない「自発休眠」と、環境条件が不適当なために休眠し、適当な環境条件を与えると正常な生育を開始する「強制休眠」がある。
「自発休眠」を打破するためには、低温の積算が必要であり、打破のための低温要求量は5℃以下の遭遇時間で示され、品種によって異なっている。
「とよのか」「女峰」「とちおとめ」「章姫」「さちのか」等のハウス栽培の主要品種は休眠が浅い品種である。
光合成
イチゴの光飽和点は、2万~3万lxとする報告や5万lxとする報告があるが、いずれにしてもキュウリの6万lxやトマトの7万lxに比較して低く、より冬場の寡日照条件への適応性が高い作物であると言える。
しかし、この数値は個葉の光飽和点であり、栽培上はお互いの葉が陰になるなどするため、冬場の施設栽培ではできるだけ多くの光がイチゴに当たるようにする必要がある。